これまでの臨床実習の様々な課題から、本学救急?災害医学分野では、早くからVR教材の開発に着手していました。このほどコロナ禍での実習不全から学生教育に生かすことも考え、学生も参加した臨床実習用のVR教材開発を進めており、本年1月から救命救急の臨床実習の補助教材として導入されています。この開発を進めている救急?災害医学分野の織田順主任教授と、開発に参加している医学科の学生に話を聞きました。
【Contens 365体育_足球比分网¥投注直播官网】 救急?災害医学分野 織田順 主任教授インタビュー▼ | 開発会議の様子▼ | 開発に参加している学生の声▼
受動的な見学型臨床実習を、「能動的」で「双方向」な学びへ(救急?災害医学分野 織田順 主任教授)
救命救急でのVR教材開発のきっかけ、従来の臨床実習の課題などを教えてください。

これまで、救急初療室(ER)では、上級医、研修医、看護師、臨床工学技士、放射線技師など多職種のチームで処置が行われ、それぞれが常に動いている中、初学者は「体で覚えるしかない」、研修医は「ぶっつけ本番になってしまう」、学生は「邪魔にならないようにで精一杯」といった状況でした。これに加え、コロナ禍での感染対策の為、学生が実習不全に陥っているのが現状です。本学でも、臨床実習の日程が短縮され、対面での実習機会が減っています。そこで今回、より効果的な臨床実習を実現するため、VR教材の開発に至りました。
実は、2~3年前から映像を撮り溜め、試行錯誤していましたが、コロナ禍で救命救急の臨床実習自体ができなくなり「臨床実習をせずに医師になってしまうのが不安」という学生の声を聞き、なんとか現場を見せてやりたいと思ったことが、原動力となりました。急いでやらねばとなり、大学側の資金補助(*)を得て、この2~3か月のうちに一気にプロジェクトが進みました。
*学長裁量経費:本学では、医学部学生や大学院生に対する医学教育の改善や改革、研究の推進や発展など、教育?研究活動の一層の活性化を目的として、『学長裁量経費』を設けています 。この学長裁量経費は、学長のリーダシップのもと、学内公募により優れたプロジェクトを選定し、経費配分するものです。
本学のVR教材の特徴を教えてください。

まず、実際のERでの処置を360度カメラで撮影したリアルな映像がソースとなっています。その映像に、必要な解説や画像などを加えたコンテンツを、VRヘッドセットをはじめ、タブレットやパソコン画面で見ることができるようになっています。
コンテンツは学内で自作しているため開発コストが抑えられ、扱いたい症例を自由に作ることができ、やりながら作っていける点に価値があります。これまでも開発会議で出た学生の声を取り入れ、既に何度もコンテンツをアップデートしてきており、このスピーディーさが自作の強みです。
また、実際に12月の中旬に大学病院で新型コロナの重症患者を受け入れており、COVID-19の救急対応に関するコンテンツを作ることが可能になっています。このような希少な事例をはじめ「新宿にある大学病院」ならではのコンテンツを作りたいと考えています。さらに、自作のメリットとして、症例だけでなくチーム医療がうまくいったケースを取り扱うこともできます。間合いや、誰にどのような指示を出すのか、声掛けの仕方など、臨場感とともに多職種連携におけるチームワークを学ぶことができるコンテンツを作れることも特徴です。
これまでの実習は見学型で、教員側も学生が何を見て何を考えているのが分からずもったいないものでした。しかしVRコンテンツでは、単なる対面授業の代替ではなく、臨床実習で見学するシーンを学生が能動的に見て、そこから主体的に学ぶことができます。また、ミラーリング(VRヘッドセットで見ている映像を、プロジェクタを通して画面に映し出せる)を使うことで学生がどこを見ているか、教員側が把握することができるため、単にヘッドセットになっただけでなく、相互に学習効率を上げていくものになると思っています。
学生が開発過程に参加することになった経緯や、学生の声を反映した点を教えてください。
VRデバイスとなり、使用感や理解の深まる教材にするためには、VR酔い対策も含め、当初は医局員、研修医に試してもらっていましたが、一番実習ができていないのは学生なので、学生教育にも活かすことにしました