2025/04/09
大学院医学研究科 研究活動

本学医学研究科大学院生2名が、日本血管生物医学会特別集会で「YIA最優秀賞」「優秀ポスター賞」を受賞 ~APPW2025でも「Graduate Student Presentation Award」を受賞

 2025年2月23日、日本血管生物医学会特別集会にて、本学社会人大学院博士課程3年の小神真梨子先生が「YIA最優秀賞」を、大学院医学研究科博士課程3年の岡沙由稀さんが「優秀ポスター賞」を受賞されました。また、岡さんは、2025年3月19日に開催されたAPPW2025(日本解剖学会?日本生理学会?日本薬理学会合同大会)でも「Graduate Student Presentation Award」を受賞されました。

※学年は受賞時のものです。

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左が小神真梨子先生。右は大会長の富山大学 学術研究部医学系 病態?病理学講座 山本誠士 先生

日本血管生物医学会特別集会「YIA最優秀賞」

社会人大学院博士課程3年 小神真梨子先生*)

*呼吸器内科学分野 助教 ※研究指導委託という形で細胞生理学分野にて研究


  • 受賞演題:特発性肺動脈性肺高血圧症における静水圧応答分子Stanniocalcin1の肺動脈リモデリング抑制機序

  • 受賞理由:特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)における平均肺動脈圧の上昇は病態形成に重要な役割を担うと予想されますが、その機序は明らかになっていません。我々は独自の静水圧印加装置を用いて加圧培養した肺動脈平滑筋細胞のRNA-seqから、圧力に反応してIPAHで発現が増加するStanniocalcin1(STC1)遺伝子を見出しました。そして、静水圧感受性分子STC1が肺動脈平滑筋の細胞周期停止を介して肺動脈平滑筋細胞の増殖を抑制し、PAHモデルマウスにおいてSTC1欠損がPAH病態を悪化させることを報告してきました。今回新たに、STC1が圧感受性チャネルPIEZO1を介して増加することが明らかになりました。PIEZO1を介する経路は適切な血管リモデリングを調整することが知られています。STC1は高圧力に反応して増加し、過剰な肺動脈リモデリングからの保護作用を担う重要な分子である可能性が考えられました。

  • 受賞者コメント:今回、血管生物医学会特別集会においてYIA最優秀賞を頂き大変光栄に思います。私は呼吸器内科学分野の社会人大学院生として、細胞生理学分野で御指導いただきながら肺高血圧症の研究を行っており、先生方の御指導のもと今回の結果を得ることが出来ました。研究を御指導いただいた細胞生理学分野 横山詩子主任教授、並びに細胞生理学分野の先生方、研究活動にともない業務調整等多大なご協力をいただきました呼吸器内科学分野 阿部信二主任教授をはじめ、ご指導?ご協力賜りましたすべての先生方へ感謝申し上げます。今後の医療に貢献できるよう、引き続き研究を進めてまいります。
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右が岡沙由稀さん。左は指導教員の横山詩子細胞生理学分野主任教授

①日本血管生物医学会特別集会「優秀ポスター賞」

APPW2025「Graduate Student Presentation Award」

(大学院医学研究科博士課程3年 岡沙由稀さん)


  • 受賞演題:①動脈管閉鎖に関与するプロスタグランジンE2受容体EP4の発現および転写制御領域の解析
    ②Identification of expression and transcriptional regulatory domain of prostaglandin E2 receptor EP4 in the ductus arteriosus

  • 受賞理由:胎児循環の特徴の一つである動脈管が成熟し、出生後正常に閉鎖するためには、プロスタグランジンE2とEP4受容体の働きが必要です。しかし、EP4の発現分布や発現制御はこれまで未解明でした。我々は、EP4レポーターマウスを独自に作製し、発達段階では動脈管特異的にEP4が発現していることを明らかにしました。また、EP4遺伝子座の上流に動脈管特異的な転写活性化領域を見出し、この領域の欠損マウスは動脈管でEP4が発現せずに、出生後に動脈管開存症を発症することを明らかにしました。この研究により、EP4の発現分布および発現制御の一端を解明することができました。これらの知見を基盤とした今後の小児医療への貢献が期待されます。

  • 受賞者コメント:今回、日本血管生物医学会特別集会において優秀ポスター賞を、またAPPW2025においてGraduate Student Presentation Awardを受賞できましたことを、大変光栄に思います。学部学生の頃から続けてきた研究が、このような成果に繋がったことを非常に嬉しく感じています。この度の受賞は、横山詩子主任教授をはじめ、これまでご指導?ご協力いただいたすべての先生方のお力添えによるものであり、心より感謝申し上げます。この受賞を励みに、さらに研究を発展させるため、精進してまいります。

指導教員コメント(細胞生理学分野 横山詩子 主任教授)


 小神真梨子先生、岡沙由稀さん、受賞おめでとうございます。小神先生の研究は、特発性肺高血圧症において圧力に反応して分泌する疾患保護的な分子としてSTC1を発見した内容です。圧力応答因子に着目したこれまでにない切り口として新規性が高く評価されました。岡さんの研究は、胎児循環から新生児循環への移行に重要な動脈管の閉鎖を司るEP4受容体の発現メカニズムを明らかにした内容で、生理学的にも遺伝子発現調節の研究領域でも高い学術的価値が認められて2つの受賞に繋がりました。お二人がたゆまず努力を続けられてきた成果だと思います。研究を支えてくださった学内、学外の先生方にも感謝申し上げます。お二人のさらなる研究の発展を期待しています。

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